tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ROE(自己資本利益率)重視、再論

2015年05月18日 17時47分21秒 | 経営
ROE(自己資本利益率)重視、再論
 此の所経営関係の記事や論文でROE重視の経営を推奨するようなものを時々見るように思います。
 
 この問題は、従来から何となく気になっていて、過日も「総資本利益率と自己資本利益率」というタイトルで書かせて頂きましたが、どうも外国系の「もの言う投資家」だけでなく、日本のマネー業界やマスコミやアカデミアまで含めてROE重視論者が増えているような気がしています。

 もう一度基本を振り返れば、定義は簡単で、
Rを利益、Eを自己資本、Aを総資本とすれば、
  R/E = R/A × A/E ということで、右辺の2つのAが相殺されることで恒等式になります。ROE=ROA×レバレッジ(自己資本比率の逆数)です。

 ただし、これが成り立つには「ゼロ金利」という条件が必要です。
 総資本100で、うち自己資本20、借入金80という場合、自己資本比率は20パーセントです。レバレッジはその逆数で、元本の4倍の借金をして総資本100(自己資本の5倍)の商売をするということになります。

 自己資本には金利はかかりませんが、借入金には金利がかかります。利益率が5パーセントでも金利が3パーセントかかれば、借入金部分の利益率は2パーセントです。上の例で言えば、自己資本分20の利益が1(5%)借入金80の分の利益は1.6(2%)合計2.6で、総資本利益率2.6パーセント、自己資本利益率は13パーセントです。

 そこで問題は、利益の総額は少なくても自己資本中心の経営を続けるか、借金をして業容を拡大し、利益の総額を大きくするかという選択になります。
 戦後のアメリカ経済全盛の時代、アメリカ企業は自己資本中心の経営でした。当時日本は資本蓄積がなく、早く成長するために借金経営でした。

 自己資本20で80の借金をし、100の経営をするためには企業の設備投資も従業員数もほぼ5倍に増やさなければなりません。その固定費を賄うためには5倍大きいマーケットを開拓する必要があります。失敗すれば破綻、ハイリスク・ハイリターン型です。

 自己資本中心で規模は5分の1でも、着実に利益を上げ、無理してリスクを取らず、自己資本が蓄積されるに従って、ゆっくりと業容を拡大するローリスク・ローリターン型は、健全経営、安全経営ですが成長はスローペースです。

 さて、どちらの経営スタイルを取るのがいいのでしょうか。これがROEvs.ROA論争です。
 統計学的には、ハイリターンはハイリスクで割引され、ローリターンはローリスクで補填されますから期待される収益は等しいはずです。

 単純なマネーゲームなら選択は自由でしょうが、雇用という人間問題(家族を含む生活)がかかる現実の企業経営です。限界のある経済成長、それに制約されるマーケットの拡大、金利動向など、リターンとリスクのバランスを考えるとき勘案すべき要素は無限に近いでしょう。
 (最近ではシャープのようなまさに予期しないことが起きる例もあります)責任ある経営者の選択は岡目八目のようにはいかない難しい問題です。


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